診療科ごとに、
適正とされる固定費率は明確に異なります。
そして重要なのは、
「何%が正解か」ではなく、
なぜその診療科ではその固定費率になるのか
を理解することです。
銀行や財務の視点では、
固定費率の高さそのものより、
その構造が診療内容と合っているかを見ています。
固定費率とは何を指すのか
まず前提として、
ここでいう固定費率とは、
主に次の費用を指します。
・人件費
・地代家賃
・リース料
・減価償却費
・水道光熱費の固定部分
これらを
売上高に対する割合で見たものが
固定費率です。
医療機関では、
変動費よりも
固定費の比率が高くなりやすい構造があります。
銀行は固定費率をどう見ているか
銀行は、
固定費率を単独では評価しません。
次の三点を
セットで見ています。
- 売上の安定性
- 固定費の回収構造
- 売上が落ちたときの耐性
つまり、
固定費率が高くても、
売上が安定していれば
必ずしもマイナス評価にはなりません。
なぜ診療科ごとに固定費率が異なるのか
診療科ごとに固定費率が異なる最大の理由は、
売上の作り方が違う からです。
・患者数で稼ぐ診療科
・単価で稼ぐ診療科
・設備依存度が高い診療科
この違いが、
固定費構造を変えます。
内科系診療科の固定費構造
一般内科や総合内科は、
比較的
固定費率が低めになりやすい診療科です。
理由は、
・高額設備が少ない
・回転率が高い
・診療内容が安定している
人件費比率は高くなりがちですが、
設備投資が抑えられるため、
全体としては
安定した固定費構造になります。
銀行から見ると、
最も評価しやすい診療科の一つです。
小児科の固定費率が高くなりやすい理由
小児科は、
固定費率がやや高めになりやすい診療科です。
・診療単価が低い
・季節変動が大きい
・人手がかかる
このため、
人件費比率が上がりやすく、
売上に対する固定費負担が重くなります。
銀行は、
固定費率の高さそのものより、
季節変動をどう吸収しているかを見ます。
外科系診療科の固定費構造
外科系診療科は、
設備依存度が高く、
固定費率も高くなりがちです。
・手術設備
・医療機器
・人員体制
これらが
一定水準必要になるため、
売上が落ちたときの
固定費耐性が重要になります。
銀行は、
症例数の安定性と
設備稼働率を重視します。
整形外科の固定費率の特徴
整形外科は、
診療科の中でも
固定費率の幅が広いのが特徴です。
・リハビリ体制の有無
・理学療法士の人数
・設備投資の規模
これらによって、
固定費率は大きく変わります。
銀行は、
リハビリ収益が
安定しているかどうかを
特に重視します。
眼科の固定費率はなぜ高く見えるのか
眼科は、
一見すると
固定費率が高く見えます。
理由は、
・高額な検査機器
・手術設備
・専門スタッフ
ただし、
診療単価が比較的高く、
回転率も高いため、
実際の負担感は
数字ほど重くありません。
銀行は、
設備投資と収益のバランスを
慎重に見ています。
歯科の固定費率の考え方
歯科は、
医科と比べて
固定費率の考え方が異なります。
・ユニット数
・技工費
・人件費
これらの組み合わせで、
固定費と変動費の境界が
曖昧になりやすい。
銀行は、
ユニット稼働率と
人件費のバランスを
特に見ています。
美容系・自由診療中心の診療科
自由診療中心の診療科は、
固定費率が高くなりがちです。
・広告費
・高額設備
・立地コスト
銀行は、
売上変動リスクを
強く意識します。
固定費率が高い場合、
キャッシュの厚みが
評価の鍵になります。
固定費率の「数字」だけを見てはいけない理由
固定費率は、
単独で良し悪しを
判断する指標ではありません。
同じ固定費率でも、
・売上の安定性
・診療内容
・地域特性
によって意味が変わります。
銀行は、
この前提を踏まえて
判断します。
銀行が固定費率を見る順番
実務での
銀行の判断順は
次の通りです。
- 売上は安定しているか
- 固定費は診療内容に合っているか
- 売上が落ちた場合の耐性はあるか
固定費率は、
この中の一要素です。
固定費率が高すぎると判断されるケース
固定費率が問題になるのは、
次のような場合です。
・売上変動が大きい
・設備投資が過剰
・人件費が診療内容と合っていない
この場合、
銀行は
追加融資に慎重になります。
固定費率を下げることが正解とは限らない
固定費率を
無理に下げることは、
必ずしも正解ではありません。
・必要な人員を削る
・設備更新を先送りする
これにより、
診療品質が落ちれば、
長期的な評価は下がります。
銀行は、
持続性を重視します。
財務伴走の視点
財務伴走では、
固定費率を
単純な削減対象とは見ません。
・診療科の特性
・収益構造
・将来の投資計画
これらを踏まえ、
銀行が理解できる形で
説明を整理します。
最後に
診療科ごとに、
適正な固定費率は異なります。
重要なのは、
数字そのものではなく、
その固定費が、
診療内容と整合しているか
です。
銀行は、
医療機関に
過度な効率化を求めていません。
求めているのは、
無理のない継続です。
固定費率を
診療科の特性とセットで
説明できるかどうか。
それが、
医療機関の銀行評価を
静かに左右する
重要なポイントです。
