―― 稟議書に書かれているのは「数字」より「人物像」
① 社長は「どんな言葉」で社内に紹介されているか
銀行との面談で、
社長が直接話す相手は、
たいてい一人か二人です。
担当者、
もしくは支店長。
しかし、
融資の判断をするのは、
その人たちだけではありません。
実際には、
- 融資課
- 審査部
- 場合によっては本部
と、
複数の目を通ります。
そのとき、
社長本人はそこにいません。
代わりに存在するのが、
**稟議書に書かれた「社長像」**です。
このとき銀行は、
社長をどう説明しているのか。
ここを理解していないと、
社長は知らないうちに
不利な評価を背負うことになります。
② 稟議書は「事実」ではなく「解釈」
稟議書というと、
数字や条件が
淡々と書かれているものだと
思われがちです。
確かに、
- 売上
- 利益
- 借入残高
- 担保・保証
といった項目は
必ず書かれます。
しかし、
それ以上に重要なのが、
この社長は、
どういう人物か。
という担当者の解釈です。
稟議書は、
単なる報告書ではありません。
「この融資を、
どう説明すれば通るか」
を考え抜いた、
ストーリーです。
つまり、
社長の言動は、
担当者のフィルターを通して
再構成されます。
このフィルターを
意識している社長と、
していない社長では、
評価に大きな差が生まれます。
③ 具体例①|「数字は弱いが、管理できる社長」と説明されたケース
■ 表面上の数字は、決して良くなかった
A社は、
追加融資の相談をしていました。
直近期の決算は、
- 売上横ばい
- 利益率低下
- 借入残高は多め
数字だけを見れば、
稟議が通りやすい案件ではありません。
■ 担当者が稟議に書いた一文
この案件で、
担当者が稟議書に書いた
決定的な一文があります。
「業績は伸び悩んでいるが、
社長は現状を正確に把握しており、
資金繰り管理に対する意識は高い」
この一文で、
審査の空気は変わりました。
■ なぜ、そう書かれたのか
社長は、
面談でこう話していました。
- 一番資金が薄くなる月
- その月の資金残高
- どこが不安で、どこは耐えられるか
楽観的な話はしていません。
むしろ、
弱点を自分から話しました。
担当者は、
こう感じます。
この社長は、
危ないところを分かっている。
これが、
「管理できる社長」
という表現につながります。
■ 稟議では「能力」より「姿勢」が書かれる
重要なのは、
稟議書に
「優秀」
「やり手」
といった言葉は
ほとんど出てこない、
という点です。
代わりに書かれるのは、
- 現状認識
- 説明の一貫性
- 管理姿勢
極めて地味な要素です。
④ 具体例②|「説明が一貫しない社長」と書かれたケース
■ 面談では熱心だったが…
B社の社長は、
非常に熱心でした。
- 将来のビジョン
- 成長戦略
- 新規事業の可能性
話は尽きません。
しかし、
面談を重ねるうちに、
担当者は違和感を覚えます。
■ 稟議に書かれた、静かな指摘
稟議書には、
こう書かれていました。
「説明内容に一部変動があり、
数字の前提条件が
面談ごとに異なる印象を受ける」
強い否定ではありません。
しかし、
この一文は重い。
■ 社長自身に悪気はなかった
社長は、
その場その場で
一生懸命説明していました。
ただ、
- 前回の説明を覚えていない
- 数字の前提を共有していない
- 感覚で話を変えてしまう
これが、
「一貫性がない」
と解釈されたのです。
■ 稟議では「ブレ」は大きなリスク
銀行にとって、
ブレは最大のリスクです。
なぜなら、
社内説明ができないから。
「前回はこう言っていたが、
今回は違う」
この状態では、
担当者は守りに入ります。
⑤ 具体例③|「分からないことを共有できる社長」と書かれたケース
■ あえて「判断を保留」した社長
C社の社長は、
新規投資について、
こう話しました。
「正直、
まだ迷っています」
「数字上はこうですが、
他に見落としがないか
意見を聞きたい」
■ 稟議での表現
担当者は、
この姿勢を
こう書きました。
「慎重な意思決定を行う社長であり、
単独での判断に固執しない」
この一文は、
非常に高評価です。
■ 銀行が恐れているのは「暴走」
銀行は、
失敗そのものより、
想定外の判断
を恐れます。
「分からない」と言える社長は、
想定外を減らします。
⑥ あなたは、どう書かれているか
あなた自身は、
銀行の稟議書で
どう書かれていると思いますか。
- 管理できる社長
- 説明が一貫しない社長
- 慎重で相談できる社長
これは、
意識すれば変えられます。
派手な言葉ではなく、
日々のやり取りで。
⑦ 稟議は「社長の履歴書」
稟議書は、
単なる社内文書ではありません。
社長の履歴書です。
そこに書かれるのは、
- 数字の結果
- 判断の姿勢
- 対話の質
銀行は、
その履歴書を見て
付き合い方を決めます。
社長が直接語らなくても、
言動は必ず翻訳されます。
だからこそ、
- 早めに共有する
- 説明を一貫させる
- 分からないことを放置しない
これが、
最も確実な
銀行対策です。
銀行対応は、
テクニックではありません。
どう記録されるか。
それを意識するだけで、
稟議の中身は、
確実に変わっていきます。
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